マイルドホラー小説 Unpleasant (仮)

視点

「危ないなあ!」
自宅前の道路で、自転車とぶつかりそうになり、咄嗟に叫んだ。
 
ちっとも前を見ていない。
スマホを操作しながら運転していたようだ。

 
「スマホ使いながら自転車運転する人、多いわよね。ウチの末っ子、この前轢かれそうになったのよ」
そう言いながら、お隣の奥さんが出てきた。
 
私が叫んだからかしら…。
恥ずかしい気持ちになりながらも平静を装った。
「えー!坊やは大丈夫だったの?」
 
「怪我はなかったんだけどね、あの日からずっと私に付いて怯えてるのよ」
 
奥さんの後ろから、ひょっこり坊やが顔を覗かせた。
「あら、こんにちは」
「こっ…こんにちはっ!」
モジモジしながら、挨拶を返してまた奥さんの後ろに隠れてしまった。
 
フフフ…可愛い。
ウチの子も生きていたら坊や位の年頃だったはず…。
 
轢き逃げにさえあわなければ…。
犯人は未だに捕まっていない。
あのときの怒りが再びわいてきた。
私の表情に気づいたのか、奥さんがハッとした顔で坊やを自宅に戻したあと、側にやって来た。
 
「明日が息子さんの命日よね」
「ええ」
「私も協力するからね、犯人探しと…」
「ありがとう。じゃあまた今夜、集会で話しましょう」
 
私は自宅の専用口から中に入った。
 
 
 
 
 
 
「おかえりー、タマ!」
「…ゴロゴロ」
 
喉を鳴らしてご主人に甘えながら、私は別の事を考えていた。